第3章:真実のカギを握る「心の目」
サトコは、またあの公園のベンチに座っていた。
春風が髪を揺らし、周囲の花々が色とりどりに咲き誇る中、
彼女はひとしきり考え込んでいた。
昨晩、宮城先生と話した
「心の目」という言葉が、ずっと頭の中に残っている。
「心の目」――それは、物事の表面的な情報に惑わされることなく、
真実を見抜くために必要な感覚だという。
彼の言葉を思い返しながら、
サトコはその意味を掴もうとしていた。
「でも、どうやってその“目”を開くのか?」
と、彼女は自問自答した。
サトコが見ている世界は、
テレビや新聞、
教科書で語られるものがほとんどだった。
そこにはきっと、見えない力が働いていることを感じていたが、
その力がどこから来て、
どんな目的で動いているのかは、まだわからない。
そのとき、ふと目の前に歩いてきたのは、宮城先生だった。
「サトコ、どうだ?」と声をかけられ、サトコは振り返る。
「先生…あの、心の目って、
どうすれば開くんですか?」と、彼女は素直に尋ねた。
宮城先生は微笑みながら、隣に座ると、
ゆっくりと話し始めた。
「心の目を開くためには、
まず自分の“違和感”を大切にすることだ。
何かおかしいと思うことがあれば、
その“おかしい”という感覚を信じて、
そこから深く掘り下げていくんだ」
「掘り下げる…?」
「そう。たとえば、
今の政治の問題について、
君は感じているだろう?
それを単に不満として終わらせるんじゃなくて、
その“何が、どうしておかしいのか?”
を知ることが重要だ。
それが“心の目”を育てることになる」
サトコは黙ってうなずきながら、
再び自分の疑問を思い返した。
── なぜ、日本の政治家たちは何の反省もなく、
巨額の報酬を手にしているのか?
── どうして、国民が苦しんでいるのに、
支援の手が届かないのか?
「でも、どうしてその“違和感”を感じる人が
少ないんでしょう?」と、
サトコはさらに尋ねた。
「いい質問だね、サトコ。
人々は、その“違和感”を感じないように、
ある種のフィルターをかけられているんだ。
テレビや新聞、SNSなどがその役割を果たしている」
「フィルター…?」
「そう。情報が流れてくるとき、
誰かがその情報を加工して、私たちに届けている。
だから、私たちが見ているものは本当の姿ではないかもしれないということを、
常に意識しておく必要がある」
サトコはその言葉を噛みしめるように考えた。
確かに、テレビやニュースでは、
毎日のように目にする言葉がある。
けれど、どうしてもその言葉が裏側で
何を意味しているのかが見えにくかった。
「でも、どうしてそんなことが…?
みんな氣づかないの?」と、
サトコはさらに問いかけた。
「気づいている人もいる。
しかし、その人たちが声を上げることで、
逆に抑え込まれてしまうことが多い。
システムは意図的に、
それを抑制しているんだ。
だから、君が今、感じている疑問は、すごく大切なことなんだよ」
「それって、どうして…?」とサトコは疑問を抱いた。
宮城先生は静かに深呼吸をしてから、こう続けた。
「今の社会には、見えない支配者たちがいる。
彼らは私たちの意識をコントロールして、
何も考えずに働かせるように仕向けているんだ。
税金も、政治も、経済も、ただの道具でしかない」
「道具…?」
「そう。道具を使って、
人々を縛り、支配するためのものなんだ。
それが、本当の目的だ」
サトコはその言葉に震えが走った。
彼女が感じていた「違和感」が、
ついに言葉になった。
社会の裏側には、こんなにも大きな力が働いていたのだ。
「じゃあ、私たちはどうすればいいんですか?」
と、サトコは声を震わせながら尋ねた。
「まずは、心の目を開くことだ。
目をそらさず、
真実を見続けること。
そして、それを他の人たちに伝えること。
それが、少しでもこの状況を変えるための第一歩だよ」
サトコはその言葉を胸に刻みながら、
これから何をすべきか、
少しずつ見えてきたような気がした。
「心の目を開くためには、
自分の違和感を信じ、
深く掘り下げることから始める。
まずはそれを、忘れないようにしよう」
春の風が再び吹き抜け、
サトコの心は、少しずつ変わり始めていた。
つづく。
第4章